スタッフが自分の言葉でプロセスワークを考えてみる

  • プロセスワークって何?
  • プロセスワークのアプローチ
  • 世界の様々な声を聴く、そしてそれぞれを躍動させる
  • 深層で働いている創造的イマジネーションのプロセス
  • その源はなんだろう。物理学と心理学の境界
  • 他の方法もあります
  • 引用・参考文献

1.プロセスワークって何?

 

 

「プロセスワークって何?」と聞かれると、私は内心どきっとします。


一言で答えるのが難しいのです。


それは扱う範囲が広く、どこまでも深く感じるからかもしれません。


それでもなんとか自分の言葉を見つけようとすれば、

「この世界と、自分の生き方を理解する枠組みのひとつ」とまず答えるかもしれません。


もう少し詳しく開いてみると、

「この現実世界に働いている力学を理解し、それを乗りこなす方法」ではないかと思っています。


多くの人がプロセスワークとは何かを示しているなかで、

なぜ学びの入り口にいる私が自分の言葉で書いたのかというと、

自分の足で歩むことを支えるのがプロ セスワークでもあると思っているからです。


壁にぶつかったらその壁が教えてくれるものを探せばいい、

間違ったと思うならそこからやり直せばいい、

そう思いながら、自分の言葉を探してみました。

 

とはいえ、初めてプロセスワークを知り、これを読んでくださっている方には、

それだけでは不十分だと思います。

 

ここで、アーノルド・ミンデル、エイミー・ミンデルの ウェブサイトより、

この言葉を引用してみたいと思います。

 

 

”Processwork is the art, science, and the psychology of following the nature of individuals, communities, and eco-systems.”

 

 

「プロセスワークは、アートであり、科学であり、

 個人、コミュニティー、生態系と地球環境の本質を理解する心理学である。」

 

 

 

一言で言うなら、私はこの言葉がしっくりきています。

 

 

2.プロセスワークのアプローチ

 

 

「壁にぶつかったら、その壁が教えてくれるものを探せばいい」 と書きましたが、

壁は「悩み」とも言い変えられると思います。

 

そして悩みにはいろいろな関わり方があると思います。

 

悩みを見ないようにする、不平不満を言う。

これらは、悩みがより増大することになります。

 

では解決するように働きかけるとどうでしょうか。

目の前に壁が立ちはだかったとき、あなたは壁の向こう側に行きたいのです。

壁の向こうでは、あなたが望む世界が広がっています。

 

ハンマーで壁をこわすでしょうか。

 

ジャンプ台を使って飛び超えるでしょうか。

 

行動を変え、意欲をかきたて、壁を越えられました。

壁はもはやあなたの後ろです。

あなたは、行動を変え、意欲をかきたてることを学びました。

そして歩いていくと、…また壁が現れます。

 

これが繰り返し続き、負荷がかかってくると、

人生は味わいのあるものではなく、

目の前にきた壁を超えながら、

ただひたすら歩くものだと感じて虚しくなることもあるかもしれません。

 

私は、悩み自分の足で歩きながらも、

途中で心のエネルギーの補給が欲しくなります。

 

心のエネルギーの補給。

それは、何か意味あることをしていると感じたり、

ふっとインスピレーションを得られること。

そして、人と温かい交流があることなどを思い浮かべます。

 

 

そのためにも、壁を目の前にしたときこういう発想はどうでしょう。

 

 意味があって壁にぶつかったんだ。

壁は私に何かを教えるために現れたのかもしれない。

 

すると壁は話し始めるかもしれません。

 

「よう、わしにぶつかったおぬし。少しは足を止めてみてはどうだ。」

 

壁が話すことを聞いてみるのです。

悩みを、戦う相手、ジャンプしたり壊したりして乗り越える相手として見るのではなく、

あなたに何かを伝えようとしている存在として見てみるのです。

 

そしてあなた自身が壁になり、

その前で立ち止まりうずくまっている”あなた”に語りかけてみるのです。

そのときに気づくメッセージが、あなたを深くから力づけることがあります。

 

そんなメッセージに満ちた壁に出合うきっかけはどのようなものがあるでしょうか。

 

家族の危機、夫婦の不和、人間関係のもつれ、うまくいかない恋愛や結婚。

収入の減少、失業、やりがいのなさ。

身体の不調、やめたくてもやめられない癖や習慣。

社会の変化。

気になる物語や映画、繰り返し見る夢、などなど。

 

それらは普通はでくわしたくないことですが、

それらをていねいに見つめ、ひも解くとき、

あなたの次の一歩が自然と暗闇の中から見えてくるのです。

 

 

3.世界の様々な声を聴く、そしてそれぞれを躍動させる

 

 

そのメッセージを聞く方法を実感をともなって覚えると、次第に内側から開かれ、

世界のいろいろな出来事に耳をすますようになることがあります。

 

世界や出来事の中にある様々な声を聞き、どれも大事にします。

 

行動や物質の必要な変化を目指すだけでなく、

その過程で消耗してしまわないよう、気づきも大事にしていきます。

気づきが起きたとき、そこにいる誰もが活性化するのです。

 

一人一人に気づきや活性化する源を探す力が求められるため、

特定のリーダーに力を預けたり、権威にすがることを放棄します。

 

コミュニティとは、共に夢を見ることから始まると考えています。

そして個人の苦しみは、コミュニティ全体の苦しみであり、

喜びも共有されるという考え方は、

人間的なあたたかさのある交流を生み出します。

 

誰かが人と人の間にある何かに気づき、自覚を持って何かを放棄し、

限界と思っていたラインを越えて、未知なる世界を冒険するとき、

共に夢見た世界はコミュニティになります。

 

時間や空間の制限を外して様々なことに気づくとき、

ミュニティは深くしっかりした根っこのある集まりになるでしょう。

 

そんな仲間とともに語り合い、活動していくことは、

人生のかけがえのない宝になるはずです。

 

 

4.深層で働いている創造的イマジネーションのプロセス

 

 

パウロ・コエーリョの「アルケミスト」という本はご存知でしょうか。

主人公・サンチャゴが、前兆(サイン)に従って旅をする物語です。

 

私は面白くて一気に読みましたが、今・ここにある現実に

何か見落としている前兆があるのでは?と新しい気持ちにさせてくれます。

 

私はこの中に、プロセスワークと通じるところがあるように感じています。

 

プロセスワークでは

「そうした微細な兆候は、

 量子物理学、心理学、瞑想に見られる“傾向性” (注:ある方向に向かって動き出す以前に、

 その方向に向かって思考し、想像し、運動すること)である」としているからです。

 (『身体症状に<宇宙の声>を聴く』より)

 

そしてその微細な兆候を見つけるワークが

プロセスワークにあることも、興味深いことだと思います。

 

すなわちそれは、物語の読み手となるだけではなく、

自分が自分の物語のつむぎ手になることを意味するからです。

 

「私たちの存在の深層で働いている創造的イマジネーションのプロセス」と、

すべての夢や体験が生起する繊細な場を、

プロセスワークでは「ドリーミング」と呼んでいます。

 

私は、このワークショップを企画するために、

ファシリテーターの桐山さん(通称・岳さん)と私たちスタッフとが話をしたことで、

創造のプロセス(ドリーミング) のおもしろさと奥深さを感じたように思います。

 

ふっと気になることや要素を大事にしていき、

展開される未知なるものがあることを体験しました。

それは未知でありながらも、自分の実感に沿っているおもしろい流れです。

 

また映画「マトリックス」とプロセスワークの夢の次元の構造が似ていることも話し、

すでにいろいろなところにその概念があることを感じたものです。

 

一人でそれを探ることも楽しいです。

入口は夜に見る夢、白昼夢などがあります。

他にもマインドマップなどもあると思います。

 

一人で探るのと同じくらい、人と共有する創造のプロセス(ドリーミング)も楽しいです。

予想を超え、想像以上にしっくりくる答えが出てくることがあります。

 

誰かの創造のプロセスを眺めているではなく、

自分がつむぎ手になると思うとわくわくしませんか。

 

私は今、何かを生み出したり、進む方向に行き詰ったときに、

参照できる方法を見つけたように感じていて、わくわくしています。

 

 

5.その源はなんだろう。物理学と心理学の境界

 

 

ジュリア・ローバツ主演の映画「食べて、祈って、恋をして」を

ご覧になったことはあるでしょうか。

 

私は、この映画の最後が印象に残って書きとめています。

(まだ見ていない人はネタバレになります)

 

「こうして私は、『探求の力学』と呼べるものに行き着いた。
重力と同様に、自然界に存在する法則だ。

その法則はこういうものだ。
日常慣れ親しんだ家、または恨み、
そういうものを勇気を出して捨て去り、
外の世界と内なる魂を目指し、探求の旅に出る。

そしてその旅のすべての出来事を『手がかり』と考える。
出会うすべての人を『先生』と考えるのだ。

そして自分と向き合い、自分自身で難点と思う部分を許せば、
真実が見えてくる。
私は自分の経験で、それを学んだ。」

(映画『食べて、祈って、恋をして』より)

 

人生で進む方向は、気づかずとも実は心の宇宙の中にあって、

それが現れるのを待っている。

途中では人生がめちゃくちゃなものに思える時もあるけれど、

後から見れば、それは一本の線でつながっていて、

これを見つけるために苦しい思いをしたのだと思う時さえある。

私は自分のこれまでの道のりを振り返りながら、実感を込めてそう思っていました。

 

では一体、その源はなんだろう。

 

今、スピリチュアリティに関心を持つ人は多くいます。

いろいろな角度から探求する道があります。

スピリチュアリティについて考えるとき、多くの人は

何か大きな源とつながりながら、自分の行く道を見つけたいと思うのではないでしょうか。

プロセスワークでは、他者への依存ではなく

自分の力で探求することに主眼を置きつつ、

量子物理学と心理学の両方の観点からの説明と実践を試みています。

 

物事が現実に現れる前、

意図しようともせずとも、頭の中で何かが動き、思い描くことはあります。

そして徐々に行動に移すと、

より強くエネルギーの渦が巻くような感じがしたことはないでしょうか。

それにつながる最初のかすかなサインを、

「アルケミスト」では「前兆」と呼んでいました。

 

「身体症状に<宇宙の声>を聴く」という本でミンデルは、こう言っています。

 

「現代の科学の主流は、
宇宙のゼロポイント・エネルギーの影響を測定することに焦点を当てている。
そして、微細なエネルギーの揺らぎによって宇宙の起源が発生したのかどうか、
議論されている。
それに対して私は、ごく小さな兆候に注目し、
そうしたかすかな兆候がどのように私たちの人生を創造していくかを、
『沈黙の力』(注:身体に内在する、宇宙につながった知性)
の観点から捉えなおすことを提案したい。
『クォンタム・マインド』では、そうした微細な兆候が、
量子物理学、心理学、瞑想に見られる“傾向性”(注:ある方向に向かって動き出す以前に、その方向に向かって思考し、想像し、運動すること)であることを議論した。」

 

 

かすかな兆候について考えるとき、私は、

DVD「ザ・シークレット」で見たイメージを思い起こします。

 

人が思考を巡らし始めると、

見えないけれどそこにある小さな小さな粒(量子?)が揺らぎ、次第に波となって動き始め、

思考したものが現実に働きかけ始めるという映像があり、興味深かったのです。

そのDVDにも量子物理学者という人の話がありました。

 

私は興味深く見る一方で、ひとつの疑問もありました。

DVD「ザ・シークレット」では、

望んだものに焦点を当て、感情を呼び起こし、

方法がわからなくてもインスピレーションに基づいて動くと、

望んだものが手に入るとありました。

私はひそかに試したことがあります。

そのときふと思ったのです。

私が今「望むもの」ははたして本当だろうか?、と。

 

意識していることだけでなく、

無意識(未知なるところ)からの兆候を見つけることも時には必要で、

その方法(ワーク)があるプロセスワークは興味深いのではないか、と思うようになりました。

ワークによって、予想もしなかった未知の方向や何かにたどりつくことがあるように感じるのです。

 

自分が望むと思うことだけにとどまらない。その先の未知を視野に入れてみる。

 

ミンデルの次の言葉は、深い示唆を示しているのではないでしょうか。

 

”Don’t only think about your process or the process of others.

Have courage, experience and follow your experiences until they explain themselves.”


「自分や人のプロセスだけを考えない。

勇気を出して体験し、その体験が何かを物語るまで、それについていってみるのだ。」

(ウェブサイト:Amy and Arnold Mindell, Psychology and Contemporary Physicsより)

 

 

ミンデル自身、

「(個人や集団との臨床経験や)症状に取り組むと、心理学、医学、物理学、宗教などについての自分の知識を-それらについて熟達しているわけではないのに-ひとつに縫い合わせざるをえなくなる場合が出てくる」と記し、

「私の中の保守的な科学者的側面は、生涯の間にひとつの学問分野にしがみついていればよいと考えている」としたうえで、この試みを進めているようです。

 

私自身、この部分は物理学に関係することもあって、理論的にまだ理解できないことが多いです。

それでも体感的には何かピンとくるものを感じて興味を持っています。

 

生理学、医学、物理学といった学問ジャンル間の関係は、長年にわたって議論されてきているそうです。

今、脳科学の世界からは、こころを解き明かそうとしています。

心理学の世界から、物理学の世界と関連し始めています。

 

ダビンチ、ガリレオの時代に科学と精神が分離して以来、

見えないものは分析の対象から外される時代が続きました。

しかし中世以前のように、見えない世界に権威がつき、対話や反論不可能な世界も困ります。

 

かつて地球は平面だと考えられていたように、今私たちが見ている世界も、

“平面の現実”なのかもしれないと思う時があります。

 

この世界や宇宙について、明かされていないことの方が多いはずで、

数百年後の地球から見れば、物理学と心理学はそう遠いところにないのが

普通になっているかもしれません。

そんな世界を想像をすると、

今、このときの未知なる世界を理解したいと前進する勇気が私はわいてきます。

 

長らく見えないものを切り捨ててきた私たちは、

これからどんな世界を切り開いて行くのでしょうか。

 

 

6.他の方法もあります

 

 

気づきを得たり、自分の内側から活性化する方法は、

これまで書いてきたプロセスワークだけでなく他にもあります。

 

散歩、ヨガ、ガーデニング、

本を読む、映画を見るなど、生活に組み込めるものもありますし、

心理学でも隣接領域があります。

 

プロセスワークに関しても、また、

自分の悩みに関わるだけでなく人の話を聴こうとするときにも、

ここに書いたことは表層的なものです。

 

本を読んだり、ワークショップに参加したり、

仲間と学びあったり、大学に行くなど、

いろんな方法で学ぶことができます。

 

私はときどき、本当の学びは、

自分自身が苦しい中でも自分の足で立ち、

本気で生きようとするのときに深まるものかもしれないと感じます。

 

そのときこそが<こころの器>が広がるときではないか、と。

 

自分の足で歩くことと、人と対話して開かれることの両輪が必要な気がしています。

 

 

最後に私がプロセスワークにたどり着いた理由を記します。

私は、カウンセリングを学んでいるときに

自分自身がセッションを受けることが何より必要だと思い、そうすることにしました。

 

そのときにカウンセリングの方法は人によって合う、合わないがあることを痛感しました。

カウンセラーになりたかった私は、

人に働きかける入口や、その人が得意とする感覚から入っていけることが大事だと感じ、

フォーカシング、箱庭療法など、考えられる限りのものを

涯かけて学ぶのだろうと思っていました。

 

しかし途中でハッと気がついたのです。

それらをどうやって自分の中で統合するのだろうか、と。

 

このときから自分の歩みが始まったように思います。

予定も計画も何もありません。

多くの縁に助けてもらい、場所を超えて求めるものを探し、

時間の不思議なつながりを感じました。

 

そして、ハッと感じる人やそのエッセンスをいろいろな角度からたどると、

行きついたのがプロセスワークでした。

 

しかし、これにも相性があるのだと思います。

私も一度、面白そうとは思うものの、理解がついていかずに休んだこともあります。

 

 

ミンデル自身もこう書いています。

 

「これから山頂を目指すときに、師や道の違いは決定的に重要だ。

なぜなら、あなたの気分やライフスタイルにしっくりくるものと、

そうでないものがあるからだ」

(『シャーマンズボディ』より)

 

 

もしあなたの興味がちらっと惹かれるものにプロセスワークがあれば、

一緒に学んでみませんか?

 

 

 

(2012年1月26日 村本 菜穂子)

 

 

引用・参考文献

  • Mindell, A., (2002) The Deep Democracy of Open Forums: Practical Steps to Conflict Prevention and Resolution for the Family, Workplace, and World, Virginia: Hampton Roads Publishing
  • アーノルド・ミンデル(2001) 『シャーマンズボディ-心身の健康・人間関係・コミュニティを変容させる新しいシャーマニズム』 青木聡・藤見幸雄訳、コスモスライブラリー
  • アーノルド・ミンデル(2003) 『プロセス指向のドリームワーク―夢分析を超えて』 藤見幸雄・青木聡訳、春秋社
  • アーノルド・ミンデル(2006) 『身体症状に「宇宙の声」を聴く―癒しのプロセスワーク 藤見幸雄・青木聡訳、日本教文社
  • パウロ・コエーリョ(1997)『アルケミスト―夢を旅した少年』角川文庫ソフィア
  • 上田紀行(1997)『覚醒のネットワーク―こころを深層から癒す』講談社プラスアルファ文庫
  • 諸富祥彦(2010)『はじめてのカウンセリング入門(上)―カウンセリングとは何か』誠信書房